研究概要 |
1.ハブ毒ホスホリパーゼA_2(PLA_2)アイソザイムの島間変異 奄美大島,徳之島及び沖縄ハブ毒の塩基性[Asp^<49>]PLA_2はそれぞれPLA-B',PLA-B及びPL-Yと呼ぶが,相互に1〜4残基のアミノ酸置換があり,孤立環境下での島特異的変異と考えられた。奄美大島ハブ毒からの神経毒性をもつPLA_2を単離し,PLA-Nと命名した。このアイソザイムは徳之島ハブ毒にも含まれるが,沖縄ハブ毒は1アミノ酸置換ホモログPLA-N(O)をもっていた。これも島間変異の例である。これより原島(分離前の島)から沖縄島が離れ,ついで残りが奄美大島と徳之島に分れたと考えられる。 2.南西諸島のマムシ亜科ハブ属ヘビの進化と系統 サキシマハブ毒より49位にArgをもつ2つの新規な[Arg^<49>]PLA_2を精製し,TeBP(R)-I, TeBP(R)-IIと名付けた。これらは3位のアミノ酸がValとlleで,1残基ポルモルフィズムを示した。またサキシマハブ毒腺から[Asp^<49>]PLA_2(TePLA_2)cDNAをクローニングした。トカラハブ毒から中性[Asp^<49>PLA_2を単一成分にまで精製し,また塩基性PLA_2アイソザイムの存在を確認したが,トカラハブ毒腺のcDNAライブラリーの作製に失敗した。トカラハブを除く南西諸島ハブ属ヘビの毒腺PLA_2アイソザイムについてアミノ酸配列に基づく系統樹を作成した。系統樹をみると,[Lys^<49>]PLA_2型群において,サキシマハブ毒のTeBP(R)-I及びTeBP(R)-IIはハブのTfBPI及びTfBPIIより台湾ハブのTmK49PLA_2にはるかに近い。またPLA2型群においてもサキシマハブ毒のTePLA_2はハブのTfPLA2よりも台湾ハブのTmPLA_2に近い。これよりサキシマハブはハブよりも台湾ハブに近い種であるといえる。一方,ヒメハブ(奄美大島)やグリーンハブ(台湾)はハブ,サキシマハブ,台湾ハブからは比較的に離れた種であることがわかった。
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