研究概要 |
1.比較研究の基礎資料を充実させるため,平成15年6月,平成16年6月,平成17年6-7月,平成18年6月一7月に北海道各地,平成15年5.月,6月,8月,平成16年5月,7月,平成17年5月,平成18年5月,7月,8月,9月に本州および四国各地,さらに17年5月-6月に中国陜西省太白山において,おもに成虫の採集を目的とした調査をおこなった.これら4年間の調査を通じ未記載種および日本未記録種の標本を含む多くの基礎資料が得られ,また幼虫の宿主や造巣習性についての新たな知見が得られた。 2.既存の資料に新たに得られた資料を加え,系統解析ソフトウエアを用いてヒラタババチ亜科の種間の系統関係を推定した。その結果、これまでに出されているヒラタババチ亜科の各属およびPamphilius属内の各種群の単系統性ならびに属間、種群間の系統関係の仮説(Shinohara,2002)が大筋で支持された。この系統仮説にこれまでに得られた各種の宿主植物および幼虫の造巣習性についての知見を照合し、暫定的な結論を得た。最も祖先的な特徴を多く残すNeurotoma属では、幼虫は葉を巻かず糸を吐いて天幕状の巣を作り中に棲む。これがヒラタババチ亜科の幼虫の造巣習性のもっとも祖先的な形と考えられる。このような原始的なタイプからOnycholyda属や一部のPamphilius属に見られる緩く不規則に葉を綴って中に棲むものが現れ、さらにPamphilius属の多くの種に見られるようにきれいに葉の縁を巻くものが現れた。基本的に卵は葉の下面に産まれ葉は下面に巻かれるが、Pamphilius vafer種群の一部の種は卵を葉の上面に産み、葉を上向きに巻くように進化したと考えられる。今後は、幼虫の宿主植物や造巣習性についての知見をさらに蓄積して、ヒラタババチ亜科の系統発生像をより明確なものにしていきたい。 3.上記の研究の過程で明らかになった新知見の一部は、19編の論文として学会誌等に発表した.
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