研究課題
基盤研究(C)
ボツリヌス毒素は、1分子の神経毒素(約150kDa)に非毒非血球凝集素成分(NTNHA)と3種の血球凝集素成分(HA)の合計5種のタンパク質が非共有結合的に会合し、650kDaの巨大な分子量を有するサブユニット構造の複合体(TC)として培養液中に産生される。本研究において、P型菌4947株(D-4947)を用い、複合体における個々のサブユニットタンパクの構成比を初めて明らかにした。すなわち、D-4947は、毒素複合体種(650kDaL-TC、610kDa TCおよび540kDa TC)を大量に産生する。いずれも同じSDS-PAGEパターンを示すが.複合体におけるHA-33/17の分子数が異なっていた。HA-33/17分子の各TC種への滴定実験によち、完全型のD型ボツリヌス650kDa L-TCは、神経毒素およびNTNHAが各1分子、HA-70が2分子、HA-33およびHA-17が各4分子からなるヘテロ12量体サブユニット構造であると結論した。これにより、ボツリヌス毒素複合体のX線結晶解析による高次構造解析のための情報を得た。また、D-4947毒素複合体種のうち、610kDa TCおよび546kDa TCは、温度などの保存条件により影響を受け、その構成成分の組換えが起こることを見出した。グリセロールなどの添加により抑制することが出来、安定な毒素複合体を実験に供することが可能となった。一方、従来法では困難であったD-4947ボツリヌス毒素複合体から神経毒素と無毒成分の大量分離・精製法を新たに確立した。さらにCおよびD型の4株から得られた毒素複合体(M-TCおよびL-TC)の純度を動的光散乱測定により検定し、各々の結晶化を130通り実験条件により試みたが、解析に供する大きな結晶は得られていない。
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