研究概要 |
ユビキチン依存性の蛋白分解系によるβ-catenin/Armadillo(Arm)蛋白量の制御はWnt/Wingless(Wg)シグナル伝達において中心的な役割を演じている。この過程には、プロテインキーゼGSK3/Zw3並びにCasein kinase Iα(CKIα)によるβ-catenin/Armのリン酸化が重要である事が報告されている。Zw3とCKIαさらには他のArm蛋白分解制御複合体の構成員は、Wgシグナル依存的にArmのリン酸化を、制御しているが、その詳細な機構は明らかでない。特にZw3とCKIαによるβ-catenin/Armのリン酸化のうちWnt/Wgシグナルが細胞内でどちらのリン酸化を抑制しているのかは不明である。これらの疑問に答えるため、本研究では、Drosophila S2R+細胞において種々のRNAi実験を行い、それをArm蛋白の中の異なる位置のSer残基に生じたリン酸化を特異的に認識する抗体を用いて解析した。 主要な結果を以下に示す。 1)CKIαはArm蛋白N-末端のSer45/Ser56アミノ酸残基を特異的にリン酸化することによって、Zw3によるArm蛋白のThr41,Ser37,33/Thr52,Ser48,44アミノ酸残基のリン酸化を促進する事を見いだした。β-catenin/Arm蛋白の分解は、これらの一連のリン酸化による事から、CKIαはCanonicalWnt/Wgシグナル伝達経路の負の制御因子であると結論した。 2)DaxinはZw3によるArmのリン酸化を促進するが、CKIαによるArmリン酸化には影響を与えない。 3)WgシグナルはZw3よるArmのリン酸化を速やかに抑制するが、CKIαによるArmのリン酸化には影響を与えない。従ってこの過程がWgシグナル伝達の主要な制御段階となっている事が判明した。 4)Wg刺激によって誘導されるDishevelledのリン酸化はCKIαによる事も明らかとなった。
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