研究概要 |
分裂酵母においてユビキチン転移酵素UbcP1/Ubc4およびUbcP4/Ubc11をコードする遺伝子の変異株は分裂期の進行異常を示した。変異株中では分裂期サイクリンCdc13が安定化し,蓄積していた。また、APC/C(Anaphase Promoting Complec/Cyclosome)の活性化によるCdc13の分解に両ユビキチン転移酵素が必要であった。ubcP1/ubc4変異株中ではCdc13のユビキチン鎖が短くなっていたのに対しunbP4/ubc11変異株中ではCdc13のユビキチン化が全体的に減少していた。以上の結果は,Cdcl3のポリユビキチン化は段階反応でありUbcP4/Ubc11がユビキチン化の開始、ubcP1/Ubc4がユビキチン鎖の伸長の関わることを示唆するものである。 Cdc13のポリユビキチン化が上述のように段階反応であることを証明するためにはCdc13ユビキチン化の試験管内再構成系を確立する必要がある。分裂酵母租抽出液を用いた再構成系構築の試みはよい結果を得られなかったため,現在,各々の構成因子を組替蛋白質として発現,精製し,各々の因子による再構成系の構築を検討中である。 ubcP4/ubc11変異株は分裂期の進行異常に加えて細胞伸長という間期の進行遅延に特徴的な表現型を示す。この表現型はDNA損傷チェックポイントに依存していた。また、ubcP4/ubc11変異株中ではDNA損傷チェックポイントのエフェクターキナーゼであるChk1が活性化していた。ubcP4/ubc11変異株はDNA損傷に対して高感受性を示さなかったことから、UbcP4/Ubc11の関与するユビキチン経路はDNA損傷チェックポイントの制御因子として機能することが示唆される。現在,標的蛋白質の候補が得られつつあることから標的候補蛋白質の安定性の制御,分解の生物学的意義について解析中である。
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