研究課題
基盤研究(C)
どんな動物でも、正常に発生するためには、特定の時期の卵母細胞に受精する必要がある。両生類やホ乳類では、卵減数分裂の第2分裂中期(MII)がその時期だ。この休止は、CSF活性によって引き起こされている。その分子的な実体は、タンパク質リン酸化酵素群のMos/MEK/MAPKカスケードであって、サイクリンB分解が阻害されることでM期休止が起こる。一方、動物界を広く眺めてみると、第2分裂で休止するものは例外であり、無脊椎動物の多くは、第1分裂中期で休止する。第1分裂中期の休止機構についての研究がほとんど無い中で、申請者らは、ヒトデ卵母細胞を用いて、1)Mos/MEK/MAPKカスケードが第1減数分裂の中期で休止させること、2)海水中に放卵されると細胞内pH(pHi)が上昇して、中期休止が解除されること、3)pHiの上昇がポリユビキチン化されているサイクリンBの分解に働くこと、を明らかにした。すなわち、第2分裂中期休止がサイクリンBのポリユビキチン化以前であるのに対して、第1分裂の中期休止はそれ以降である点が異なっており、興味深い。さらに面白いことに、pHi上はMAPKカスケード阻害せずに、休止解除に働く。カスケード下流の何らかの反応がpH感受性なのだ。よく考えてみると、このような制御法は当然であることがわかる。というのも、MAPKカスケードは、減数分裂過程におけるDNA合成の阻害や未受精卵のアポトーシス誘導にも働いており、複数のターゲットがある。もしもpHi上昇がこのカスケードを阻害してしまったならば、これら全ての反応も停止してしまい、第2減数分裂を完了できなくなってしまう。そのような危険を避けるために、中期休止実現に関与する反応だけは、pH上昇によって解除される方式に進化したのだろう。しかし、他のターゲット(DNA合成阻害など)はpH上昇によってもなんら影響されず、減数分裂は継続される。実に精妙な制御法であることが明らかになった。
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