研究概要 |
シロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES1 (ASI)、ASYMMETRIC LEAVES2 (AS2)遺伝子は、葉の分化過程で、茎頂メリステム周辺で特異的に発現しているclass I knoxホメオボックス遺伝子(BP,KNAT2,KNAT6)の発現を抑制し、葉原基細胞を分化状態に維持する機能をもつ。AS2タンパク質は新奇なドメイン構造(AS2ドメイン)をもつAS2ファミリーのメンバーであり、シロイヌナズナには42のメンバーが存在する(AS2,ASL1〜ASL41)。AS2とASL1の過剰発現体の葉は共に上向きカールしており、形態的には極めて類似していることから、部分的に似た機能をもつ可能性が示唆された。本研究では、第一に、シロイヌナズナのAS2ファミリーのメンバーのうち、特に、AS2と高い相同性をもつASL1,ASL2,ASL3,ASL4の葉の分化過程における機能を明らかにすること、第二に、AS2ファミリーのもつAS2ドメインの機能を明らかにすることを目的とした。そのために、AS2,AS1についても詳細な発現パターンの解析とコードするタンパク質の細胞内局在の解析を行った。(1)AS2と蛍光タンパク質の融合体は核内の特定の領域(核小体周辺)に局在する。さらに、AS2の核局在には、すべてのAS2ファミリーのメンバーで保存されているAS2ドメイン内のCモチーフ(CX_2CX_6CX_3C)が必要であることがわかった。また、ASLI-GFP、ASL3-GFP融合タンパク質は核局在を示した。(2)asl1やasl3とas2との二重変異体はas2単独変異体と顕著な違いは見られなかった。また、as1との二重変異体(asl3-1 as1-ma)もas1単独変異体と顕著な違いは見られなかった。(3)AS1とAS2のmRNAの蓄積パターンは必ずしも同じではないが、葉原基形成の初期において、部分的には同じ細胞で発現しており、そのような細胞では共同して機能していると推測される。また、AS1の発現制御下でAS2を発現してもas2変異の表現型を相補する。これらのことから、AS1とAS2は、同じ分子機構に関わっていると考えられた(論文準備中)。ASL1,ASL3はAS2と同様に核で機能する可能性が考えられるが、ASL1,ASL2,ASL3,ASL4が葉の分化過程において、AS2と似た機能をもつ可能性について、さらに、検討することが必要である。
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