研究概要 |
リンゴ「ふじ」の日持ち性は驚異的であり、生産量世界一の品種に至らせた大きな要因の一つである。この日持ち特性の分子機構を明らかにし次世代リンゴの選抜育種に有効なDNAマーカーを設定する目的で研究が進められた。日持ち性(硬度計により果肉軟化速度を計測)を異にする14品種(「ふじ」の親品種と「ふじ」の後代品種)を供試し、エチレン合成系や細胞壁崩壊に関わる遺伝子MdACS1,MdACS3,MdACO1,MdPG1,MdGal1,MdExp3,MdERF1,MdERF2の発現様式についてノーザン解析した結果、「ふじ」では、MdACO1の発現がスタートするものの、そのレベルは低く推移すること、またポリガラクツロナーゼ遺伝子MdPG1がほとんど発現されないことが判明した。また、MdPG1に先行してMdACS3発現が認められるが、この発現量はその後の、MdPG1発現量とパラレルであった。次ぎに、「ふじ」の芽条変異体である「弘前ふじ」(熟期が1ヶ月ほど早まる突然変異体で日持ち性が劣る)について同様の解析を進めたところ、MdPG1の強い発現が認められた。MdPG1が「弘前ふじ」で強力に発現することから「ふじ」のMdPG1に変異が生じているわけではなく、それらを制御する因子、すなわち熟期そのものを感知し、完熟プロセスを進行させる機構の中の、なんらかのトランス因子が関与している可能性が高いものと推察された。
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