研究概要 |
本研究は,(1)自家不和合性高ルチン系統に自家和合性系統を交配して自殖性を導入した自殖集団(SC)と,自家不和合性系統の放任受粉他殖集団(SI)におけるルチン含量の選抜効率を比較し,ソバ育種における自殖性導入の効果を評価すること,(2)高・低ルチン系統を材料としてルチン含量に関する遺伝様式の解明とQTL解析を行うことを目的とした. (1)SIとSCのF4,F5を栽培し,個体別に種子のルチン含量をHPLCで測定した.各集団から上位10%の個体を選抜し,次代F5,F6におけるルチン含量の遺伝獲得量から遺伝率を求め,選抜効率を評価した.SIよりSCの遺伝率が高く,普通ソバへの自殖性の導入は高ルチン含量系統の選抜に有効なことが明らかになった.他の量的形質においても,自殖性導入が選抜効率の向上に有効と考えられた. (2)QTL解析の材料作出および遺伝様式の調査のために,自家不和合性の高ルチン系統と低ルチン系統を正逆交配してF1とF2を作出した.これらを両親系統とともに栽培し,ルチン含量を測定した.その結果,F1においては両系統のほぼ中間の値となったが,F2バルク種子では低ルチン系統に近い値となった.自殖性集団における高い選抜効果からルチン含量は相加効果が大きいと考えられた.QTL解析は,個体当たり種子数が少なく,個体別ルチン含量を測定できなかったため実施できなかった.
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