研究概要 |
オオムギにおいて種子の皮裸性は収穫産物の用途を規定する重要な形質である.皮ムギは醸造ならびに飼料用に用いられるのに対し,裸ムギは加工が容易で主に食用に用いられる.本研究の目的はオオムギの種子の皮裸性を決定する遺伝子を単離し,その機能を解明することである.まず,AFLP法とバルク法を併用し,裸性遺伝子座に密接に連鎖するAFLPバンドをスクリーニングした.得られた連鎖バンドの配列をもとに多型性を示すPCRマーカーを裸性遺伝子座の両側に設定することができた.次に,開発したPCRマーカーを用いて裸性品種と皮性品種の5組合せの交雑に由来する分離集団2,380個体を調査し,裸性遺伝子を2つのマーカーの間にそれぞれ0.6cMおよび0.06cMの遺伝距離でマッピングした.さらに,データベース検索により裸性遺伝子座がイネ第6染色体長腕領域とマイクロシンテニーを示すことを見いだし,イネゲノム配列情報を利用して裸性遺伝子座の絞り込みを進めた.さらに,裸性遺伝子座に密接に連鎖するマーカーをプローブとしてオオムギ品種はるな二条BACライブラリーをスクリーニングし,同遺伝子座をカバーする約500bpからなる物理地図を構築した.この過程で,皮裸性遺伝子の有力な候補遺伝子を見いだした.RT-PCR法およびmRNA in situハイブリダイゼーションにより候補遺伝子の発現解析を行ったところ,開花後1週間の頴果の種皮において高い発現が認められた.
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