研究概要 |
各種野生イネの光合成特性を調査した結果,EEゲノムを持つOryza australiensisが,AAゲノムの栽培種であるO.sativaよりも高い光合成能力を持っている可能性が示唆された.このOryza australiensisから光合成を律速しているRubiscoの活性化酵素であるRubisco activase遺伝子を単離し,O.sativaのものと比較したところ,その塩基配列の相同性は98%と非常に高かった. 次に,イネの栽培品種日本晴を供試材料とし,アグロバクテリウムを介して,CabプロモーターにつないだRubisco activaseのイネの遺伝子を導入し,過剰発現を狙った形質転換体を作出した.また,個葉光合成能力の改良によるイネの多収化を図る基礎研究として,その光合成特性(個葉光合成能力,光合成関連酵含量)を調べた.結果的には強度のCo-suppressionのため,形質転換体のRubisco activase含量は日本晴より低くなり,光合成能力を向上させることはできなかった. 一方,アンチセンス遺伝子を導入した形質転換体を調査した結果から,強光下における定常状態の光合成速度は,少なくとも通常の20〜25%のRubisco activase量があれば維持できると考えられた.しかしこの量では,光誘導過程における光合成速度の増加が遅く,光強度が変化しやすい環境下においては不十分であると考えられた. 今後はCo-suppressionを防ぐため,イネ以外の種(オオムギ,トウモロコシ,ホウレンソウ,インゲンなど)からRubisco activase遺伝子を取り出して栽培イネに導入する,また,Cabプロモーターの代わりにCAMV35Sプロモーターを利用する計画などを進めている.
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