ウチョウラン類{ウチョウラン(Ponerorchis graminifolia)およびその変種とされているクロカミラン(Pnr.graminifolia var.kurokamiana)、アワチドリ(Pnr.graminifolia var.suzukiana)、サツマチドリ(Pnr.graminifolia var.micropunctata)、そして近縁種のヒナチドリ(Pnr.chidori)、およびそれらの交雑種}の流通している系統、品種の効率的育種および種苗生産推進のため、種間関係、系統間類縁関係を整理する目的で、まずウチョウラン属植物の原記載情報(protolog)の収集をおこなった。同時に国内所在の基準標本の確認作業をおこなった。更にウチョウラン類の国際品種登録の実態調査をおこなった。 ウチョウラン類の植物名記載情報を検討した結果、サツマチドリ(Pnr.graminifolia var.micropunctata)については国際植物命名規約に基づく有効(valid)な原記載が存在せず、調査をおこなった2003年時点では植物名として無効(invalid)であり、植物名の記載、ないしは品種としての新規登録が必要であること明らかとした。 国内所在のウチョウラン類の基準標本の確認をおこない、所存不明だったクロカミランの基準標本を発見した。 連合王国王立園芸協会(RHS)への国際品種(GREX)登録情報を詳細に調査した結果、有効な植物名記載に基づいて登録されたウチョウラン類の品種(GREX)名登録は、2003年時点でPnr.suzukiana (Awachidori-ucho : Pnr.graminifolia var.suzukiana × Pnr.graminifolia)およびPnr.graminifolia × Pnr.kurokamiana (Kurokami-ucho)の2系統のみであった。RHS蘭登録局諮問委員会等よりの情報収集の結果、ウチョウラン類のGREX登録による権利保護が進行しない原囚の一つとして、上述の植物名記載問題に加え、登録の際の日本語名のローマ字変換において、日本におけるローマ字表記のISO式とヘボン式の混在(併用)による表記の不統一が登録申請却下理由となっていることを明らかにした。
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