研究概要 |
ユキモチソウの花芽分化は,5月に新軸の先端で開始された.6-7月には包の内部で付属体の原基が形成され,8月下旬より小花原基の分化が認められ,その後も小花原基の分化と発達はゆっくりと進み11月にほぼ小花原基の分化が終了した。ユキモチソウは2年サイクルの仮軸分枝型の生長をしていた.低温に十分遭遇した小球の発芽適温は,20-25℃であった.休眠打破に必要な低温要求量は,10月で4℃,60日以上,11月では30日以上であり,低温が満たされていると適温下40日程度で発芽に至った.開花サイズのユキモチソウ球茎は,自然低温遭遇後の12月15日以降に加温すると2月中旬より揃って開花した.また11月15日から4℃30日の低温処理後加温することにより,1月下旬より開花させることが可能であった.果実内種子数は0-2粒の割合が多く,果実内種子数が多いと一粒重は小さくなる傾向にあったが,総種子数と平均種子重に相関関係はなかった.種子重が大きいと生産された植物体の地上部も大きくなり,収穫された球根重も大きくなる傾向にあった.開花初期の最大CO_2同化速度(A_<sat>)と日中の電子伝達速度(ETR)は,雄よりも雌で高い傾向にあった.雌雄に共通して,より大きな光強度の下で生育する個体ほどA_<sat>とETRが高く,日中の光利用効率(ΔF/Fm')は低下していた.雄個体では日中の非光化学的エネルギー放散(NPQ)を大きくすることによって,光合成の日中低下を回避していることが示唆された.光利用効率は夕方にはほぼ回復し,顕著な強光阻害は見られなかった.開花終了時には,雌雄にかかわりなくA_<sat>とETRが低下し,光利用効率は夕方までに回復しなかった.相対光量子密度4%〜14%の弱光下では,雌雄や時期に係わらず一定の光合成能を維持していた.
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