研究概要 |
1.土壌乾燥処理がビワとモモ幼樹の葉と根のソルビトール含量ならびに細胞核の変化に及ぼす影響ビワでは,乾燥処理によって葉と根のソルビトール含量は増加した.乾燥処理終了後かん水によって回復させた結果,葉と根のソルビトール含量は次第に低下した.対照区では折損の発生が見られたのに対して,乾燥処理区では新根の発生は観察されなかった.乾燥処理によって,葉肉と根端組織の細胞核の崩壊が引き起こされるとともに,デンプン粒が消失した.モモでは,乾燥処理によって葉のソルピトール含量は増加したが,根のソルビトール含量には影響は見られなかった.乾燥処理によって,葉肉細胞中のデンプンは容易に減少し,回復処理後に再び蓄積した.強乾燥区では葉肉細胞の細胞核の崩壊が引き起こされたが,中乾燥区では細胞核の変化は見られなかった. 2.果樹の新根の太さと一次木部維管束数との関係 供試した果樹の一次木部維管束数は以下のとおりであった.カラタチ:4〜6個,ナシ:3〜7個,ブドウ:3〜6個,モモ:3〜7個,ビワ:4〜8個,ザクロ:5〜7個,ヤマモモ:3〜7個.ブドウとナシにおいては根径と一次木部維管束数との間に高い相関が見られた.窒素施肥量を変えてモモ幼樹を栽培した結果,太い根の一次木部数は多かった.また窒素施肥量が多い樹ほど新根の発生数とともに太い根が多く発生した. 3.バラ科果樹の根の皮層細胞におけるphi肥厚と土壌乾燥処理による影響 バラ科果樹の根には,皮層細胞の細胞壁が肥厚する特徴的な細胞構造が見られる.この構造はphi肥厚と呼ばれ,カスパリー線が発達する前に発現する.ビワ樹を用いて土壌を乾燥させて生育させた場合,乾燥させていない根に比べてphi肥厚は顕著であった.このことからphi肥厚は土壌乾燥に対する防御機構の一つと考えられる.
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