研究概要 |
本年度は,昨年度に続き新規RNAヘリケース(RNA helicase like=RHL)の機能や細胞内局在性等の解明のための実験を主に行った。RHLのORFを含む約1.8k bpのcDNAをヒスチジン・タグ付きのタンパク質発現用ベクターpET 14bに組込み大腸菌内での発現を試みた。その結果,ORFから予想される約68kDaの目的のタンパク質(rRHL)の発現が認められた。しかし,このrRHLは封入体となってしまい,菌体破壊後の不溶性画分に分画される。その不溶性画分を塩酸グアニジンを用いて可溶化し,ニッケルキレートカラムにて精製を試みたところ,SDS-PAGE上でシングルなバンドを確認することが出来た。続いてそのバンドをゲルから切り出したものを抗原としてウサギを用いてポリクローナル抗体の作製を試みたところ,rRHLを認識する抗血清を得る事に成功した。その抗血清を用いて産卵後0〜60時間の休眠卵・非休眠卵を12時間おきに採取した卵の核画分より抽出したタンパク質を用いてイムノブロットを行った。その結果,RT-PCRにて解析したRHL mRNAの発現パターンと同様な変動を示すタンパク質が確認された。更に,核画分と細胞質画分での免疫化学的解析を詳細に行ったところ,このタンパク質は,確かに核画分にのみ存在する事が明らかとなった。しかし,細胞質画分にもrRHL坑血清に反応する分子量の異なるタンパク質があることも確認された。現在,この結果を更に検討中である。 一方,精製されたRHLはやはり不溶性になってしまい現在でも完全に可溶化条件は確立していないが,触媒機能解析の第一歩として,0.1% SDSで可溶化させたRHLを用いてATPase活性を測定したところ弱いながらも活性が認められた。現在,rRHLの可溶化,リフォールディング,ATPase活性測定等の条件検討を更に行っている。また,rRHLに対する坑血清を用いた免疫組織化学的実験のためのカイコ卵の固定や切片作成の予備的な実験も行い免疫染色の基礎を確立した。
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