研究概要 |
1.イネの選択的なヨウ素吸収機構:イネの選択的なヨウ素吸を説明する仮説(イネは,ヨウ化物イオンや臭化物イオンをイオン吸収すると同時に,イネ根表面でヨウ化物イオンを分子状ヨウ素に酸化してヨウ素を分子吸収する)を提案しこれを栽培実験で検証した。即ち,この仮説に従えば,無電荷の分子状ヨウ素はヨウ化物イオンよりも吸収されやすいと推定され,イネのヨウ素吸収にはイオン吸収に分子吸収が加算されるため,イオン吸収のみの臭素よりも吸収量が多くなるものと解釈できる。従って,イネのヨウ素吸収量はイネ根部の酸化力との関連が予想される。そこで,イネの水耕栽培実験を行い,イネの根部酸化力とヨウ素及び臭素吸収量との関連性を検討した。その結果,イネの根部酸化力と臭素吸収量との間に相関は認められなかったが,ヨウ素吸収量との間には有意の相関が認められた。 2.土壌の可溶性ヨウ素濃度とイネ赤枯れ病との関連性:播種後20日目のイネ(日本晴)幼植物をヨウ素汚染土壌で29日間栽培し,土壌の可溶性ヨウ素濃度とイネの吸収ヨウ素量やヨウ素による生育障害との関連性を調査した。さらに,イネのヨウ素毒性に対する抵抗性の品種間差を検討し,以下の知見を得た。(1)イネの地上部のヨウ素濃度は土壌の可溶性ヨウ素濃度と相関した。(2)イネは,ヨウ素吸収よって生育障害を受け,地上部のヨウ素濃度の増加に伴い,草丈と乾物重が低下した。(3)イネのヨウ素による生育障害は,地上部のヨウ素濃度が200mg/kg以上になると顕在化した。地上部ヨウ素濃度が200mg/kgを越える場合の土壌の可溶性濃度は4mg/kgであった。(4)イネのヨウ素に対する抵抗性には品種間差が認められた。
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