研究概要 |
本研究は、既存アミノ酸脱水素酵素の構造生物学情報や生化学的情報を基に部位特異的変異法により新規アミノ酸脱水素酵素をデザインし、その中で有望な特性を有するものをさらにランダムミューテーションやDNAシャッフリング等の進化分子工学的手法により"fine-tuning"することで、Kcat/Km比の高いアスパラギン酸脱水素酵素(AspDH)の創成を目指したものである。最初にアスパラギン酸結合部位をデザインするためにアスパラギン酸アミノ基転移酵素をラン藻よりクローニングしX線結晶構造解析により三次元構造を決定した。次に基質特異性改変用のテンプレート遺伝子として、リンゴ酸脱水素酵素との三次元構造の類似性よりラン藻由来のアラニン脱水素酵素AlaDH(Aタイプアミノ酸脱水素酵素)遺伝子および基質アスパラギン酸との構造類似性よりBacillus subtilis由来のグルタミン酸脱水素酵素GluDH(Bタイプアミノ酸脱水素酵素)遺伝子を選択した。次いで総合化学計算システムMOEのホモロジーモデリングと分子動力学計算-リガンドドッキング予測機能を用いてAlaDH、GluDHの構造生物学や生化学的情報を加味したランダム変異シミュレーションを行い、非実験的にAspDHやその他の基質特異性改変酵素の創成を試み、有望と思われる変異酵素を実験的に作製し、その機能解析を行った。その他、進化分子工学を用いてBs-GluDHの耐熱化も行い、T_m=41℃から61℃へと大幅に熱安定性が向上した変異酵素(Q144R)の作製に成功した。今回作製したAlaDH由来の4種の二重化変異酵素(L129R/M132S, L129R/M132T, L129K/M132S, L129K/M132T)は、いずれもほとんどAspDH活性を示さなかったが、GluDHとその耐熱化変異酵素由来の4種の変異酵素(G82K, M101S, G82K/Q144R, M101S/Q144R)でかなり高いAspDH活性が観察された。現在、進化分子工学を用いてKcat/Km比の高いAspDHの創成を試みている。
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