研究概要 |
我々は,オジギソウ(Mimosa pudica)を外部から投与した化学物質で刺激することにより,動物の神経や筋肉と類似した植物の応答としての短時間の急速な電位変化(インパルス)誘導を指標として,このような活性物質を広く天然から見いだすための簡便な生物試験法を開発した。本研究では,マメ科ネムノキ(Albizzia julibrissin)の抽出物のヘキサン可溶部に含まれる活性成分について検討した。この成分は比較的極性は低いが不安定で,冷所,溶液状態で徐々に分解する。従って,保存ができず取り扱いが難しい。しかし,平成15年度採取したネムノキ2Kgから,強いインパルス誘導活性を示す活性物質が数mg得られた。また,種々の分析方法(主として分光学的手法)を用いてその構造を明らかにすることも試みた。平成16年度は引き続き,ネムノキの活性物質の単離・構造解明をおこなった。すなわち,ネムノキ数キログラムから最終的に約40mgの活性成分を得た。この活性成分について各種スペクトルを測定・解析を行った。その結果,新規化合物であると考えられる本活性成分の部分構造を明らかにした。また,得られた活性物質の,他の植物に対する生理作用についても検討した。さらに冬期は生物試験が難しいオジギソウにかわる通年試験が可能な植物として,オジギソウと同様に興奮性細胞をもつ他の植物,例えばキュウリやカボチャの芽生えを用いて,より簡便な生物試験法の開発・確立を試み,キュウリではインパルスを誘導できた。また,シロイヌナズナの気孔開閉試験により,イオンチャンネルに対する影響も調べた。興味深いことに,本研究で得られた活性物質は植物に対して生理作用,例えば発芽・生長阻害作用を示すことが認められた。本研究を発展させることにより,今まで全く知られていなかった新たな植物生理活性を持った物質の発見が期待できる。
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