研究概要 |
まず,タバコ由来のトレハロース分解酵素(トレハラーゼ)遺伝子のクローニングならびに大腸菌での発現を試みた。発現した蛋白質はインクルージョンボディを形成していたため,酵素活性を保持した状態では得られなかったものの,ポリクローナル抗体の抗原として用いることができた.これを用い,野生株のタバコにおけるトレハラーゼの発現を見たところ,その発現量は非常に低いことが確認された.同時に,トレハラーゼアンチセンス遺伝子を導入したトランスジェニック植物(22個体)を作製した.しかしながら,これらのトランスジェニック植物体中でのトレハロース蓄積量を測定した結果,トレハロースの蓄積は確認できなかった. 続いて,トレハロース合成系酵素群(TPS;トレハロース6-リン酸合成酵素,TPP;トレハロース6-リン酸フォスファターゼ)の遺伝子のクローニングを試みた.まず,他の植物のDNA配列を基に,TPSおよびTPPコード遺伝子の保存領域からプライマーを作製し,PCRを行い,それぞれ約650bp,約450bp増幅断片を得た.次に,Clontech PCR Select cDNA library作製キットを用い,cDNAライブラリーを作製し,TPSおよびTPPをコードするcDNAクローンのスクリーニングを行った.それぞれの遺伝子についてスクリーニングをした結果,TPPに関しては1クローンのポジティブクローンが得られた.そのクローンは1,854bpからなり,384アミノ酸をコードしていることが明らかになった.TPSについてはcDNAライブラリーのスクリーニングによりポジティブクローンを得ることができなかったため,5'-RACE法および3'-RACE法を行い,2,177bpの塩基配列ならびに676残基の推定アミノ酸配列が決定された. 今後は二つの遺伝子の導入によるトレハロースの蓄積を目指していく予定である.
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