研究概要 |
栄養補助食品(および飼料)スピルリナの栄養欠点の克服することを目的として藍藻スピルリナに含まれるシュードビタミンB_<12>の生合成機構や生理機能の検討を行った. 1.シュードビタミンB_<12>の生理機能の解明 藍藻ゲノムデータベースからビタミンB_<12>(B_<12>)依存性メチオニン合成酵素をコードするmetH遺伝子が藍藻に普遍的に存在していた.そこでスピルリナゲノムDNAを鋳型とし,遺伝子配列よりデザインしたプライマーを用いてインバースPCR法によりスピルリナのmetH遺伝子のクローン化を検討し,大腸菌による本酵素の大量発現系を構築した.その結果,得られたOpen Reading Frame(ORF)は3549塩基からなり,推定されるアミノ酸配列は1183残基であった.配列中には,ホモシステイン結合部位(GGCCGTXPXHI),B_<12>結合部位(DXHXXG,SXL,GG),触媒活性に要求される亜鉛結合部位(C,CC),還元的再活性化に必要なS-アデノシルメチオニン結合部位(RYXXGY)が他の生物由来のメチオニン合成酵素と同様に,完全に保存されていた.特に,B_<12>結合部位は大腸菌メチオニン合成酵素と同様にコリン環コバルトに配位していた塩基5,6-ジメチルベンズイミダゾールが解離し,その代わりに酵素タンパク質のヒスチジン残基のイミダゾールが置換配位したbase-off/His-on型であることが推定される.これらのことより,スピルリナにはB_<12>依存性メチオニン合成酵素が存在し,シュードB_<12>はメチオニン合成酵素の補酵素として機能していることが示唆された. また,広く生物界に分布するB_<12>酵素メチルマロニルCoAムターゼの高感度活性測定法を確立し,スピルリナ細胞に本酵素が存在するかどうかを検討したが,本酵素活性は検出されなかった. 2.B_<12>前駆体投与による強化法の検討 培地中に5,6-ジメチルベンズイミダゾールを添加することで,生理活性の有するB_<12>への転換を検討した.その結果,スピルリナ細胞は5,6-ジメチルベンズイミダゾールを取込まず,添加量が高濃度になると顕著な生育阻害を生じることが明らかとなった.
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