研究概要 |
<1>FGF-2と位置選択的脱硫酸化ヘパリンとの複合体の構造 FGF-2とヘパリンの相互作用メカニズム解明のために,ヒトFGF-2と種々の脱硫酸化ヘパリンの複合体形成を小角X線散乱により解析した。FGF-2・天然型ヘパリン複合体では,球状のFGF-2分子がヘパリン鎖の同一側面に配置していると考えられた。しかし6-O-脱硫酸化およびN-脱硫酸化ヘパリンとの複合体ではランダムに会合していると思われた。一方,2-O-脱硫酸化ヘパリンはFGF-2と会合せず,イズロン酸残基のO-2の硫酸基がFGF-2との会合に最も必要であることが分かった。 また分子モデリングによる解析より,O-2の硫酸基はイズロン酸残基の立体配座を限定し糖鎖の柔軟性に影響するため,2-O-脱硫酸化がFGF-2との複合体形成を阻害すると考えられた。一方,O-6および2-Nの硫酸基はグルコサミン残基の配座すなわちヘパリン鎖の柔軟性に影響を与えないと考えられた。このため脱6-硫酸化および脱N-硫酸化ヘパリンは,FGF-2との複合体形成したと考えられた。 <2>アガロース由来新規四糖の生成とアガロースの立体構造の関連 本研究では,アガロースの部分メタノリシスで生じる四糖がアガロースの立体構造を反映し,さらにゲル化の機構を示唆すると結論する。この四糖は内部の3,6-アンヒドロガラクトース(AnGal)残基とガラクトース(Gal)残基が環状アセタール結合で結ばれた特殊な構造であった。硫酸化およびメチル化アガロースも同様の構造の四糖を与えた。 アガロースのGal残基のOH-4およびAnGal残基のO-5の間には水素結合があり,これがゲル化に必要である。また,この水素結合は上記四糖のアセタール結合の生成に有利な立体構造を与えると思われた。一方AnGal残基がD-体である他はアガロースと同じ構造であるβ-カラギーナンは,分子モデルでは同様の水素結合が局所的には可能であるが,メタノリシスでは該当する四糖が生じなかった。β-カラギーナンがゲル化せず,かつ上記の水素結合が四糖生成とゲル化に必須であることより,本四糖はartifactではなく,アガロースの立体構造より直接導き出されるものと考えられた。
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