研究概要 |
7月接種-8月伐倒木(以下7月接種木)では接種部付近の木口面に明瞭な変色が認められたが,10月接種-11月伐倒木(以下10月接種木)ではほとんど認められず,軸方向の変色長も,7月接種木では平均40cm程度であったのに対し,10月接種木では10cm未満と小さかった。共生菌は7月接種木においては接種点から20cm以内の地点の変色域内で繁殖しており,分離率は20%以下であった。一方,10月接種木においては変色域とは関わりなく接種地点から最大80cm地点まで繁殖しており,分離率は高いものでは100%の地点もあった。10月接種木ではほとんど変色が発生せず,その機能が働かなかったため変色域に関わらず共生菌が広く繁殖したものと考えられる。 また,生立木に共生菌を接種したところ,全ての接種木で材変色が確認された。変色長は個体間でのばらつきが大きかったが,変色長は接種後の時間経過とともに変色が伸長した。特に接種から6ヵ月後までの伸長が著しかった。共生菌は,接種3ヵ月後には変色部と非変色部から分離された。一方,接種6ヵ月後以降は,非変色部から共生菌は全く分離されず,変色部のみから分離された。接種12ヵ月後には,共生菌が全く分離されない個体,高率で分離される個体があった。また,接種点から共生菌が連続して分離された部位までの範囲での分離率は6ヵ月後までは平均50%程度であったが,それ以降時間経過とともに低下し,12ヵ月後には平均30.0%であった。共生菌は生立木に接種された時点では活性が高く,接種後3ヵ月以内に著しく繁殖域を広げるため,樹木の生体防御反応と考えられる変色が追いつかず,非変色域でも繁殖していたものと考えられる。しかし,接種3ヵ月後から6ヵ月後の間で共生菌の伸長が停止し,変色が共生菌の繁殖域に追いつき,その後共生菌の活性は低下したと考えられた(鈴木ら,2005)。
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