研究概要 |
1)ハマボウ挿し穂を異なる濃度の塩水に浸しその後の発根状況を観察した結果、ハマボウ挿し穂が許容しうる最大冠水塩水濃度は22,000(μS/cm)程度であり、発根期間は5〜10月であると推定され、この結果はハマボウ挿し穂の土中発根試験で裏付けられた。2)異なる濃度の塩水を含ませた播種床に硫酸処理を加えたハマボウ種子を置きその後の発芽状況を確かめた実験により、ハマボウ種子が許容しうる塩水濃度も、ハマボウ挿し穂と同様に22,000(μS/cm)程度と推定された。特に水道水および13,500(μS/cm)以下の塩水を含ませた播種床では、実験開始から5日後の発芽率が90%を示した。 3)これらの結果から、水辺に生育する他の木本と比較してハマボウは挿し穂および種子段階において優れた耐塩水性を持っており、許容濃度以下の塩水による冠水が予想される汽水域への人為植栽の妥当性が導かれた。 4)ハマボウ種子が発芽する期間は4〜10月間に限定され11月〜翌年3月の期間は休眠期に相当することが推測された。さらに、ハマボウ種子の発芽段階における許容最大塩水濃度は15,000〜20,000(ppm)で、その耐塩水性が最大となる季節は8〜9月であることが明らかになり、ハマボウ種子の耐塩水特性は既往研究で明らかにしたハマボウ差し穂と同等であった。 5)ハマボウ種子の許容塩水濃度は、通常の塩生種と比較すると高い数値であることも判明した。さらにハマボウ種子の塩水冠水下における発芽率は、種の採取時期(P<0.001)、発芽する季節(P<0.005)、塩水濃度(P<0.001)と有意な関係にあることが統計的に示された。 6)以上の本年度結果および昨年度の研究結果から、かつては南九州地域の汽水域に広く分布したオオタチヤナギとハマボウが耐塩水性に優れ南九州汽水域への導入に最適な樹種のひとつであることが明らかになった。
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