研究概要 |
海産仔稚魚に含まれる必須脂肪酸成分(DHA,EPA)を1個体ごとに高感度かつ簡便に分析する手法を確立し,これを天然仔稚魚の分析に適用して脂肪酸成分の個体差の特徴を捉えた。 1.高安定蛍光検出器を導入して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による脂肪酸分析の微量化を行った。この高感度分析により,体長が数mmの仔稚魚1個体の体幹部,眼部(1個)の脂肪酸分析が可能となった。 2.脂質の抽出,反応,回収の過程を極力簡略化して分析の迅速化を行った。脂質抽出以後の過程は一本の使い捨てガラスバイアル中で実施可能となった。ひとつの分析に要する時間はHPLCを含めて約3.5時間,多検体を同時に分析する場合は1日当たり約10検体の処理が可能であった。 3.噴火湾および陸奥湾で採集した18魚種326個体の仔稚魚の体幹部(消化管・卵嚢を除く)の脂肪酸分析を実施した。仔稚魚の主要脂肪酸はすべての個体に共通してDHA(18-32%),パルミチン酸(18-27%),EPA(4-19%),オクタデセン酸(7-12%),ステアリン酸(4-23%)の5種類であることが明らかとなった。 4.上記の仔稚魚のDHA含有量(μg/個体)を算出し,仔稚魚を体長に応じて9個体ずつ分級した場合の変動係数(CV)を比較した。その結果,高い変動係数が2.4-3.1mmおよび4.4-5.2mmのマガレイ(CV0.6-1.0),4.8-6.0mmのカタクチイワシ(CV0.7-0.9)で認められた。また,イカナゴでは5.1mmのクラスを除いて全体的に低い値(CV0.2-0.5)であった。天然仔稚魚のDHA含有量は個体差が常に一定であるわけではなく,その差の大きくなる特定の発育段階があることが明らかとなった。
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