研究概要 |
黒潮影響域で,バフンウニとムラサキウニの摂食圧がアラメ海中林の形成に及ぼす影響と季節的な海中林との関係を明らかにするために,和歌山県日ノ御崎沿岸の実験区において調べた。実験区におけるバフンウニとムラサキウニの密度は,5月から7月にかけて,淡水の過度の流入に起因した大量へい死により著しく低下した。大量へい死後,実験区にアラメの幼体が入植し,水温が平年よりも極めて高く推移したにもかかわらず,今まで潮間帯にのみ認められたアラメ群落が水深1mまで分布を拡大した。しかし,それ以深2mまでの有節サンゴモ群落においては,幼体は認められたが,成体に至らずに消失した。いずれのウニも殻径18mm以上で成熟した。バフンウニは成熟から産卵にいたる秋季から春季に,深所の有節サンゴモ群落から浅所の海中林形成域へと明瞭な深浅移動が認められた。 バフンウニとムラサキウニの成長および生殖巣の発達が,生息する場所の海藻遷移の進行系列を反映するか否かを明らかにするため,7月に,和歌山県美浜町沿岸の水深2.0mと5.3mにおける小型海藻群落,御坊市沿岸のヒバマタ目褐藻群落とカジメ群落で調べた。小型海藻群落は2地点とも小形多年生海藻が優占し,現存量は0.6kg/m^2以下であった。ヒバマタ目褐藻群落の現存量はジョロモクが71%を占めて1.6kg/m^2,カジメ群落ではカジメが87%を占めて6.6kg/m^2と著しく高かった。バフンウニの1m^2当たりの密度は,浅所の小形海藻群落で10個体,ムラサキウニはヒバマタ目褐藻群落で18.7個体と高かった。両種の生殖巣指数は,ヒバマタ目褐藻群落が他の群落よりも高かった。バフンウニの成長は,ヒバマタ目褐藻群落とカジメ群落が小型海藻群落よりも速かった。しかし,ムラサキウニの成長はヒバマタ目褐藻群落が他の群落よりも速く,カジメ群落に対しても有意な差が認められた。極相をなすカジメとヒバマタ目褐藻群落とでウニ2種の成長に相違が認められたが,それらは途中相をなす小形海藻群落より明らかに成長が速く,生殖巣が量的に発達し,遷移の進行系列を基本的に反映すると結論された。
|