研究概要 |
魚類普通筋ミオシン軽鎖は,電気泳動における分子量の違いから,高等脊椎動物と同じパターンを示す白身魚グループ(A1軽鎖>DTNB軽鎖>A2軽鎖),カツオ,マサバ等サバ科グループ(A1軽鎖>A2軽鎖>DTNB軽鎖)およびイワシ類・アジ類のグループ(A1軽鎖>A2軽鎖≒DTNB軽鎖)に分けられる。そこで,これらの3つのグループの中から,まずイワシ・アジ類としてマアジおよびシマアジにつき,血合筋からmRNAを抽出し,cDNAライブラリーを作製した。つぎに,cDNAライブラリーを抗マサバ血合筋・ミオシンD1軽鎖ポリクローナル抗体を用いてスクリーニングした。得られたcDNAクローンにつき,その塩基配列および演繹アミノ酸配列を決定し,血合筋ミオシン軽鎖(D1およびD2)の一次構造上の特徴づけを行なった。その結果,マアジ・ミオシンD1軽鎖をコードするクローンが2種類得られたが,その違いは3'側非翻訳領域に限定されており,アミノ酸配列に違いはないことを確認した。さらに,決定したマアジ・ミオシンD1軽鎖のアミノ酸配列をすでに報告済みのシマアジ・ミオシンD1軽鎖のそれと比較したところ,93.5%の相同性を示し,魚種間で極めて類似していることを認めた。また,マアジ・ミオシンD1軽鎖のアミノ酸配列を普通筋ミオシンA1およびA2軽鎖と比較したところ,普通筋ミオシンA1軽鎖が有するN-末端側の特異配列であるDifference peptideに極めて類似した構造を持っていることおよび塩基数ではA1軽鎖とA2軽鎖のほぼ中間であることを明らかにした。したがって,血合筋ミオシンD1軽鎖は機能的には普通筋ミオシンA1軽鎖の役割を保持しているものと推察された。 一方,マアジおよびシマアジ血合筋・ミオシンD2軽鎖のcDNAクローニングの結果,D2軽鎖においてマアジ,シマアジともに2種類のクローンが得られたが,シマアジD2軽鎖ではアミノ酸配列の一部が異なるアイソフォームの存在を確認した。さらに,得られた両魚種D2軽鎖のアミノ酸配列を普通筋ミオシンDTNB軽鎖と比較したところ,普通筋で認められるリン酸化部位のセリン残基がD2軽鎖においても確認できたことから,D2軽鎖は機能的にはDTNB軽鎖と同等であるものと推察された。
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