研究概要 |
魚類体表粘質物の主体をなす魚類体表粘液糖タンパク質の性質を解明するため,有明海独特の魚類五種を試料に用い,研究を行った. 有明海独特の魚類五種(ムツゴロウ,ワラスボ,ハゼクチ,アカシタビラメ,ショウキハゼ)を生きたまま入手した.粘質物中の粘液糖タンパク質は,DE-52陰イオン交換クロマトSepharose CL-4Bゲルろ過などにより分画し,精製した.ハゼクチ,ショウキハゼ(以下グループI)から得られた粘液糖タンパク質は,これまでに分離した魚類体表粘液糖タンパク質のクロマトグラフィー上での挙動とほぼ一致したが,ムツゴロウ,ワラスボ,アカシタビラメ(以下グループII)の粘質物から分離した糖タンパク質は、イオン交換,ゲルろ過ともに明らかに異なる溶出パターンを示した。 次に,精製糖タンパク質について,糖鎖を中心とする構造研究を行った.グループIから得られた糖タンパク質では,他の魚類で見られた普遍的なパターン(糖含量約50-75%,シアル酸,N-アセチルガラクトサミンが豊富)を示した,一方,グループIIから得られた糖タンパク質では,糖含量が著しく低く(約10%),これまでに検出されたことのないマンノースを共通して含有していた.β-eliminationにより,グループIの糖タンパク質からのみ糖鎖は遊離した.一方,グループIIではヒドラジン分解により糖鎖が遊離した.以上の結果,グループIはムチン型(O-配糖体型),グループIIはアスパラギン結合型(N-配糖体型)糖タンパク質であると考えられた.次に主要な糖鎖の構造研究を行った.グループIではNeuAcα2→6GalNAcが同定された.グループII(ムツゴロウ)では,マンノース,ガラクトース,N-アセチルグルコサミン,N-アセチルノイラミン酸から構成される,3本鎖のN-配糖体型糖鎖構造が推定された.
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