研究概要 |
この研究は,農業生産活動を起源とする廃棄物の種類と種類別総量が,生産活動といかに連関しているか,その推定を可能とする.生産分析の「逆問題の解法」ともいえる調査研究である.成果としては,フードシステムの「裏側」とでも言うべき廃棄物の「生産」過程を推計し,フードシステム内の「静脈産業」が確立できる基盤があるか,今後の課題が明らかになる.生産段階や流通・消費段階での廃棄物総量の効果的な削減案の提案もできるようになる.国民経済・地域経済あるいは地域農業経済・経営の効率的な環境維持の運営の基礎ともなる. 先行研究で,CO_2に注目した産業連関表がある.それをチッソとリンを中心にした産業連関表に展開し,石川県産業連関表を使って展開を試みた. 石川県河北潟に流入するチッソとリンの排出量を事例として求めた.農業部門の総排出量は、水田転作を反映して水田からの排出は減少傾向にあるが、畑からの排出は微減に留まっている。チッソ排出最の順位は水田・畜産・畑・果樹園の順から,畜産・畑・水田・果樹園の順になり、水田と畜産・畑の順位は逆転した。リン排出量は,水田・畑・畜産・果樹園の順から,畑・水田・畜産・果樹園の順になり,これは水質め向上を図る対策順位である. 産業部門の総排出量は、産業構造の変化により排出源単位の増加と企業規模の拡大のため、チッソ総排出量は横ばいであり、リン総排出量は微増である。 産業構造の変化と部門間の関連をより反映する「産業連関分析」を進めるべきであるが,石川県の「地域産業連関表」を用いての分析は,推計地域はきわめて限られた地域であるため,県全体の産業連関構造を反映する「地域産業連関表」の援用は限定的なものにとどまった. 廃棄物の「生産」は,同時に多種類の排出になるため,従来の生産経済学的モデルの援用では不十分である.このため,逆推計の可能性を中心に,新しい生産-排出連関モデルの構築を進めている.
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