研究概要 |
土構造物の維持管理においては耐震補強策が重要な役割を担っている.本研究では土地改良施設における土構造物の代表例として干拓堤防とため池を取り上げ,現地で常時微動地表観測ならびに弾性波実験を実施した.常時微動観測では,得られた観測データをFFTにより周波数変換し,水平・鉛直成分のパワースペクトル比の平方根で表されるH/Vスペクトルから卓越振動数を求めることにより,補強策を講じる上で必要となる土構造物の特性値である1次固有振動数を求め,弾性波実験から得られるS波速度より推定される値と比較検討した.その結果,干拓堤防においては常時微動観測から求めたH/Vスペクトルのピーク周波数が,パワースペクトルとPS検層から推定した固有振動数より約10%ほど小となり,PS検層を実施した深度以深に地震基盤層が存在することを示した.次に,改修ため池において実験を実施したところ,基礎処理を施した皿池形状の堤体についてはパワースペクトルを除いて両者は一致したが,深い谷形状の傾斜基盤上に築造された改修ため池については,弾性波実験から推定した値より約15%ほど小となった.これらの結果は,本年実施したパイプラインの埋設地盤においても同様であった.以上の結果から,常時微動観測から求めたH/Vスペクトルは地盤・構造物系の1次振動特性を表し,地震応答解析を実施する場合は地盤の工学的地震基盤面まで含めて解析する必要があることを明らかにした.
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