研究概要 |
既存の有明干拓堤防(佐賀県)と横島干拓堤防(熊本県)の残留沈下状況について,堤防沈下データなどを基に分析した。有明干拓堤防の場合,基礎地盤の土層構成や土質には地域的な顕著な差はなく,消波ブロック設置に伴う沈下挙動には地域的な違いは見られなかったが,平成6年渇水時の地盤沈下挙動には地域的な差が認められた。一方,横島干拓堤防の場合,基礎地盤の土層構成や土質が地域により大きく異なり,地域的な沈下傾向の違いが顕著であった。 有明粘土の力学的性質については,横島干拓内の2地点で採取した不撹乱試料についての実験結果や既存の実験結果を基に検討した。その結果,有明粘土地盤の粘着力,室内ベーンせん断強度,有効土被り圧で圧密後の定体積一面せん強度の大小関係が明らかとなった。一面せん断試験からは,正規圧密粘土の強度・変形特性を示す圧密圧力に関する知見,および有明粘土のHvorslevの強度定数は粒度組成に依存すること,有明粘土の非可逆比Λは0.6〜0.8の範囲にあり,粒度組成や塑性指数の影響を受けないこと,などが明らかとなった。また,有明粘土の圧縮指数C_cは,自然間隙比e_nに強く規定され,C_c-e_n関係はe_nのべき関数で精度よく近似できることが分かった。定ひずみ速度載荷圧密試験からは,明瞭な圧密降伏応力p_cとひずみ速度の対数値との線形性は確認できなかったが,定ひずみ速度載荷圧密試験から求まるp_cは,段階載荷による圧密試験から求まるp_cより大であった。 残留沈下予測手法としては,消波ブロック設置などの施工過程を容易に考慮でき,多次元的な変形挙動を解析可能な弾塑性有限要素法による圧密変形解析が最適な方法であるとした。また,渇水時における地盤沈下などの影響や基礎地盤の土質の複雑さ,地盤調査・土質試験データの信頼性,などを考えれば,干拓堤防の維持管理上,継続的な動態観測の必要性・有用性が強く示唆された。
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