研究課題
基盤研究(C)
本研究では、LactobacillusおよびBifidobaceriumなどのいわゆる乳酸菌の腸上皮細胞に対するムチンなど自然免疫関連因子の発現誘導能を明らかにすることを目的として研究を立案した。昨年度申請者が見出してきた細胞接着性乳酸菌数株のmRNAレベルでのムチン発現誘導能をCaco-2細胞を用いて検討した結果、ムチンを低レベルで誘導する菌株が見出された。また、他の自然免疫関連遺伝子に関しては、特に抗菌ペプチド、IL-8および10の誘導を強く促進する株が見出された。本年度は、Caco-2細胞のみならず多くの培養細胞に対する細胞付着性株のスクリーニングおよび自然免疫関連分子の発現誘導能を検討することとした。また、自然関連分子の発現を誘導した菌株を用いてその誘導メカニズムに関して菌体側因子および細胞側因子としてToll-likeレセプターが関与しているか否かを含め検討することとした。本年度あらたに細胞接着性を有する乳酸菌株のスクリーニングをCaco-2細胞に加えムチン発現能が高いとされるHT-29細胞や分化しないとされるIntestine-407細胞によって行った。付着試験法はcarboxyfluorescein diacetate(CFDA)によって菌体を蛍光標識することによって行った。その結果、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus gasseriおよびBifidobacterium longumなどに高い付着性が見出された。これらの菌株のムチン、抗菌ペプチド(CAP18、ディフェンシン)、IL-8およびIL-10の発現誘導能を検討した結果、細胞種によってレスポンスが異なることが示された。すなわち、ムチン誘導能を検討するにはHT-29細胞が適しており、サイトカインや抗菌ペプチドに対するレスポンスを検討するためにはCaco-2細胞が適していることが示唆された。本研究の結果、一部の細胞接着性乳酸菌を除き、炎症性サイトカインをバックグランド以上には誘導しないこと、ムチンや抗菌ペプチドを低レベルで発現誘導する乳酸菌株が存在することが見出され、今後詳細に検討することによって感染予防の観点から利用性が高まるものと考えられた。
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