研究概要 |
(1)ウシ乳腺上皮細胞をトランスウェルインサート培養法で培養し、成長ホルモン(GH)、ラクトジェニックホルモン(LHs)またはGH+LHsで刺激を行った。また、mRNAを抽出しRT-PCR法によりα-S1カゼインmRNAとGHレセプターmRNA発現を解析した。GHはウシ乳腺上皮細胞のカゼイン分泌を刺激した。100ng/mlと1000ng/mlのGH処理区へのLHs添加はα-カゼイン分泌量を有意に増加させた。α-S1カゼインmRNA発現は、LHs処理区よりもGH処理区とGH+LHs処理区で強かった。 (2)ウシ乳腺上皮細胞のStat5リン酸化に及ぼすGHの影響について検討した結果,成長ホルモン(GH)は10〜100ng/ml、プロラクチン(PRL)は100ng/mlの濃度でStat5リン酸化を増加させた。また、刺激時間について検討を行ったところ、GHは30〜120分にかけて、PRLは30〜60分にかけてStat5リン酸化を増加させた。GH及びPRLは100ng/mlにて30分間刺激することによってStat5のリン酸化を有意に増加させた。 (3)ウシ乳腺上皮細胞のMAPキナーゼリン酸化に及ぼすGHの影響 GH及びPRL100ng/mlにて30分間刺激し,ウェスタンブロット解析により解析を行った。GHはPRLと同様にMAPキナーゼのリン酸化を増加させた。 以上の結果から、GHはウシ乳腺上皮細胞に直接作用し,細胞内Stat5およびMAPキナーゼのリン酸化を増加させることが明らかになった。このことから,ウシ乳腺上皮細胞におけるGHによるカゼイン合成の増加はPRLと同様にJak-Statシグナル伝達経路を介して行われていることが示唆された。さらに、GHはMAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化させタンパク質合成などを促進させていると考えられる。
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