研究概要 |
鶏受精卵を用いた環境ホルモン評価法の応用と確立を目的として,まずジエチルベストロール(DES),ノニルフェノール(NP)およびビスフェノールA(BPA)を受精卵へ投与し,孵卵7日目の胚の生存率,孵化率および生殖巣の発育(雌化率)を検討した。次に,受精卵へエストラジオール17β(E_2),BPAおよびDDTを投与し,胚の肝臓におけるビテロジェニンII(VTG II)のmRNA発現レベルを検討した。結果は以下の通りである。DESを1mg投与した場合,胚の生存率,孵化率は対照区(無処理)のものと比較して有意に低い値を示し,90%以上の個体において,生殖巣の雌化が生じた。また,NPおよびBPAを100mg投与した場合に,胚の生存率,孵化率は対照区(無処理)のものと比較して有意に低い値を示したが,生殖巣の雌化は起こらなかった。VTG II mRNAの発現に関しては,コーン油を投与した対照群の雌雄ともVTG II mRNAの発現は見られなかったが,E_2を投与した陽性対照群では,雌雄ともVTG II mRNAが明瞭に発現した。BPA投与群の雌では,発現レベルは低いがVTG II mRNAの発現が認められた。しかし,雄胚での発現は確認されなかった。一方,DDT投与群の雌では,VTG II mRNAが明瞭に発現していた。また,DDT投与群の雄にも発現レベルは低いがVTG II mRNAの発現が認められた。以上の結果より,BPAおよびDDTが,エストロジェン様活性を持つことが確認され,内分泌攪乱作用を有する物質の生物検定法として鶏受精卵を用いた環境ホルモン評価法が有効であることが示唆された。
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