研究課題
基盤研究(C)
本研究計画はイヌやネコなどの食肉類動物を宿主とするパルボウイルスの進化(変異)を明らかにするとともに、新しい宿主動物へ感染・増殖する能力を獲得する機構を解明することを目的とし、以下の項目について研究を行い、新たな知見を得た。1)新抗原型のV203株に加えベトナムネコ由来の抗原型CPV-2b分離株とイヌ由来日本分離株の非構造蛋白遺伝子の塩基配列を決定したところ、日本株と比較してベトナムのネコ由来株は全て545番目のアミノ酸にGlu→Valの置換を有していた。2)V203株に対して新たに4つのモノクローナル抗体(mAb)を作出した。これらのmAbは各抗原型ウイルス株に対する反応性により、全ての抗原型を認識するもの、抗原型2a、2bおよび2cと反応するもの、並びに抗原型2bに特異的なものの3種類に分類された。さらにmAbに抵抗性の変異ウイルスを用いた解析では、2つのmAbはパルボウイルスの抗原部位Aを、残りの2つは抗原部位Bまたはその近傍を認識することが示唆された。3)ベトナムのハノイ、ホーチミン両市近郊のイヌおよびネコ由来直腸スワブ126サンプルからパルボウイルスの分離を試み、イヌ由来8株並びにネコ由来1株の計9株を分離した。4)mAbとの反応性により、分離株の内ネコ由来株を含む8株はCPV-2b型と判定されたが、ハノイ市のイヌから分離されたHNI-4-1株は2つのmAbに対する反応性が顕著に低下していた。5)HNI-4-1株のVP2遺伝子を解析したところ、426番目のアミノ酸に置換が認められ、HNI-4-1株は本アミノ酸の置換に起因する新しい抗原変異株であると考えられた。以上の研究により、新抗原型を含むパルボウイルスを検出、型別する際に有用なmAbが作出され、パルボウイルスが現在も抗原性の変化を含む変異により進化を続けていることが示された。
すべて 2004 2003 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 文献書誌 (1件)
Archives of Virology 149・11
ページ: 2261-2269
Archives of Virology 149(11)
Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology 10・6
ページ: 1085-1089
Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology 10(6)