研究課題
基盤研究(C)
コラーゲンによる血小板凝集は止血にとって最も重要である。コラーゲンによる血小板活性化は動物種差が大きく、ヒト以外の動物の血小板活性化メカニズムに関する知見はわずかしかない。コラーゲンが血小板を活性化するとき、コラーゲンは内因性ADPを放出し、アラキドン酸カスケード活性化によりトロンボキサンA_2 (TXA_2)を産生し、それらが2次的に凝集を強める。本研究では主にヒト、ウシ、ラットの血小板のコラーゲンによる凝集におけるADPやTXA_2の役割の相違、凝集や放出反応に関わるシグナル伝達系の相違を検討した。ヒト血小板のコラーゲンによる凝集はTXA_2依存性が高く、ラット血小板ではADP依存性が高かった。ウシ血小板では低濃度コラーゲンによる凝集はTXA_2とADPの両方に依存し、両者のいずれかの関与が欠けるとほとんど凝集しなかった。しかしヒト血小板と異なってウシ血小板ではTXA_2のアナログU46619は単独ではほとんど凝集あるいは血小板内Ca^<2+>上昇を起こさないが、ADPが共存すると凝集を起こし、TXA_2はADPに協力することで凝集に寄与することが明らかとなった。コラーゲンによるTXA_2産生量(TXA_2の代謝物TXB_2で測定)はウシ血小板ではヒト血小板より少なかった。遺伝性疾患Chediak-Higashi症候群(CHS)はウシでは出血が重篤に現れる。CHSウシの血小板ではTXA_2産生はそれほど抑制されていないが、ADP放出はきわめて少なかった。これは濃染顆粒内のADP量が少ないためであった。上述のようにウシ血小板ではADPが共存しないと、TXA_2は凝集に寄与しないので、TXA_2/ADP協力関係が発揮できないことがウシのCHSでは出血が顕著に現れる原因であると考えられた。ヒトのCHSでは血小板からのADP放出が少なくてもTXA_2だけでかなり凝集に寄与できるので出血が重篤とならないと考察した。興味深いことにCHS血小板ではコラーゲン刺激からATP放出やTXA_2産生に至るシグナルは正常であるのに対して、コラーゲンの直接作用に関与するシグナルは弱く、コラーゲンによる血小板活性化にはCHSでシグナルが低下している系と正常に作動する系の二つが存在することが示唆された。
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