研究概要 |
住環境にみる真菌性ズーノーシスおよび原因真菌について,公衆衛生学的観点から菌学・生態学,疫学,病態的研究を行い,真菌症の多様化を確認した。特にズーノーシス症例が従来の報告と比較してどのように変化しているかを重点的に調査研究した。その成果を以下に要約した。 (1)住環境にみる真菌検索:動物の体表に分布するものや深在性真菌症の原因となり得る真菌を対象に,住環境における分布を調べた。日和見感染菌として注目される接合菌(Rhizopus, Absidia, Mucor, Mortierella)や黒色真菌(Exophiala, Aureobasidium)は湿性環境である浴室,洗面所,台所の排水口周辺などから高頻度に検出された。Emericellaは乾燥環境であるダスト,タタミ,押し入れベニヤ板などから少量検出された。またCandidaの多くは動物やヒトの体表,粘膜などの生体から分離されたが,住環境では脱衣所,浴室から検出された。 (2)真菌性ズーノーシスの多様化に関する研究:臨床獣医師の協力により様々な真菌性ズーノーシス症例を収集し,その病巣材料より原因真菌を分離同定した。症例数として最も多かったのは皮膚糸状菌症であり,Aspergillus症,Alternaria症,Fusarium症,Candida症,接合菌症など種々の真菌による感染症がみられた。多種の原因菌による深在性真菌症が確認されたことから,身近にみられる真菌性ズーノーシスの多様化が示唆された。 (3)分離株の病原性因子特定に関する研究:真菌性ズーノーシスの原因真菌の病原因子を,生物活性,特に分泌酵素との関連から検討した。日和見感染菌であるEmericella nidulans, Aspergillus fumigatus, A.terreus, Scopulariopsisでは蛋白分解酵素産生能が確認された。また,接合菌,Scedosporium, Emericella, Aspergillus fumigatusでは溶血性を確認した。
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