研究概要 |
フォールドマーとして、アミノ酸のα位炭素が不斉中心ではなく側鎖上にのみ不斉中心が存在する光学活性5員環α,α-ジ置換アミノ酸と6員環α,α-ジ置換アミノ酸を設計した。5員環状α,α-ジ置換アミノ酸は、酒石酸ジエステルを出発原料として、水酸基の保護、還元、ヨード化によりジヨード体を合成し、このジヨード体によりマロン酸ジエステルをビスアルキル化して5員環構造を構築し、その後クルティウス転移反応を行うことにより効率的に合成可能となった。さらに、5員環上のエーテル保護部分は、水酸基、アミノ基などの各種官能基に変換することも可能となった。ピペリジン骨格を有する環状α,α-ジ置換アミノ酸の合成は、マロン酸ジエステルをプロモメチル-1,3-ジオキソランにてビスアルキル化した後、アセタールの脱保護、各種アミン体との縮合、還元により6員環ジエステルとし、その後クルティウス転移反応を行うことにより合成した。 これらの方法により得られた光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸からなるペプチドを合成し、それらのペプチドについて溶液状態、結晶状態でのコンフォメーション解析を行った。その結果、側鎖上にのみ不斉中心を有する5員環α,α-ジ置換アミノ酸からなるホモペプチドでは、側鎖上の不斉中心のみにてヘリックスの方向性を制御できることが明らかとなった。このように、短いペプチドでも安定な片方の方向性のヘリックス構造を形成するフォールドマー分子を合成することに成功した。現在のところ、これらの分子を用いた不斉合成反応には成功していないが、これらの研究成果により不斉触媒反応への応用の基盤となる知見が得られたものと考えられる。
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