研究概要 |
我々は多官能性化合物およびヘテロ環化合物等の簡便合成を目的として,下記に示した連続するヘテロ原子が重要な役目を果たす新規転位反応を開発した. 1.ヘテロ原子と連結するアシルエナミン類が関与する転位反応:我々は緩和な条件下進行するアシルエナミン誘導体が関与する[3,3】一シグマトロピー転位反応を開発し,ヘテロ五員環化合物(インドールおよびベンゾフラン類)の簡便な合成法を開拓した.インドール合成においてはアシル基および置換基の種類により,転位体,インドール類およびジエニルイミン体がそれぞれ選択的に得られることも見出した.更にこの手法をベンゾフラン類合成へ展開し,抗菌活性を有する天然物合成に成功した.この手法の特徴はフェノール性水酸基の保護基を必要としない点であり,従来の方法と比較すると最も高い通算収率かつ短工程合成法となる. 2.ヘテロ原子と連結するイミン類が関与する転位反応:我々はヒドロキシム酸エステル類を塩基で処理すると速やかにイミノ1,2-Wittig転位反応が進行し,2-ヒドロキシオキシムエーテル類が高収率で得られることを初めて見出した,更に本手法をジアステレオ選択的イミノ1,2-Wittig転位反応へも展開し,光学活性なcytoxazoneの簡便な合成を行った.本手法は,アミノアルコール類およびアミノ酸類の合成として,非常に独自性の高い方法である. 3.ヘテロ原子と連結するアミン類が関与する転位反応:我々は,ベンジルアルコキシアミン類を種々の有機金属で処理すると効率的に,タンデム型開裂,転位,アルキル化反応が進行して,高収率でアリールアミンが得られることを見出した.更に,環状アルコキシアミン類のタンデム型反応は最も効率的に進行することから,本手法は多官能性複素環化合物類の新規合成法を提供するものである.
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