研究概要 |
糖鎖機能の理解はポストゲノム時代における重要課題の一つであるが,分析技術の発達が不十分なことから核酸やタンパク質に比べて研究が大きく立ち後れているのが現状である.タンパク質に結合した糖鎖は,N-結合糖鎖,ムチン型糖鎖,グリコサミノグリカンの三つに大別できるが,目的とする生体試料中のこれら糖鎖を一気に解析する方法論は確立されておらず,タンパク質を網羅的に解析するプロテオーム研究に二次元電気泳動という世界標準というべき方法論が確立しているのとは対照的である.そこで本研究では,簡便で再現性がよいタンデム型二次元クロマトグラフィーを検討し,糖質研究への応用を試みた.分析装置は4液の低圧グラジエントポンプとオートサンプラー,イオン交換カラムおよびタンデムに連結された逆相カラム,蛍光検出器および記録計により構築した.N-結合糖鎖には2-アミノピリジンによる蛍光標識を,また0-結合糖鎖であるムチン型糖鎖とグリコサミノグリカンは2-アミノベンズアミドによる蛍光標識を行った.イオン交換樹脂の種類,逆相カラムの種類,溶離液の種類,グラジエントプログラムを検討し,これらの蛍光誘導体の分離を試みたところ,NaCl濃度が0Mの時はN-結合糖鎖とムチン型糖鎖が,0.15Mではシアル酸結合型糖鎖が,0.5Mでは低硫酸化グリコサミノグリカンが,また,1Mでは通常のグリコサミノグリカンがイオン交換カラムから溶出し,それぞれ有機溶媒のグラジエントによって逆相カラムで良好に分離できることが明らかになった.ヒト尿中ビクニンには硫酸化度の異なる4種類の低硫酸化コンドロイチン4硫酸の存在が報告されているが,本法を応用した結果,さらに微細な構造多様性を有することを明らかにすることができた.
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