研究課題
基盤研究(C)
受容体モデルタンパク質にリガンド分子が結合するプロセスにおいて、タンパク質分子の結合サイトも、リガンド分子も相互に立体的な相補性を高めるように構造が変化する。これを分子動力学計算法などのシミュレーション手法を用いて解析する場合には統計熱力学的に有効となるような回数の計算を必要とする。しかしながら、立体構造とその時系列的変化を組み合わせた4次元時空間の瞬間瞬間を捉えた時空間のスナップショットを網羅的に計算し、それらの相互関係を解析することで成立するネットワーク構造データを解析すると、相当大きな記憶容量が必要とされるが、その計算回数は統計的に有効となるようなものではなく、それぞれの経路については1回どおりの計算回数で済まされるため、計算負荷はシミュレーションの繰り返しと比べると飛躍的に少なくなる。このような4次元時空間のスナップショットの発生には、タンパク質分子およびリガンド分子の立体構造の動的空間を網羅的に計算しておき、その空間的な組み合わせについての検証を行う手法が適用可能である。そこで、分子構造の動的空間がどのようなものであるかを明らかにするためモンテカルロ計算を行うことで網羅的に分子のコンフォメーションを発生し、その内部座標を主成分分析することで時間とは独立な解空間を発生させるシステムを構築した。この計算結果を詳細に調べたところ、環構造を持つ化合物には環構造の特性に対応した解空間が出現することを明らかにした。そこで構造と解空間との関係性を3次元図形の位相幾何学としてとらえることで、より複雑な立体構造を有する物質について解空間のトポロジーを見積もる数学的原理を解明した。
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