研究概要 |
1.神経変性疾患原因タンパク質へのムチン型糖鎖の付加反応 パーキンソン病は,神経変性疾患の一種であり,その発症には,α-シヌクレインの凝集が関連している.α-シヌクレインの凝集とムチン型糖鎖の付加との関係を調べるため,4種のGalNAc転移酵素アイソザイムを用いてin vitroでの糖付加反応を調べたところ,GalNAc-T1とGalNAc-T13がα-シヌクレインを基質とした.さらに,何種類かの培養神経細胞にストレスを与えたときに,神経特異的なアイソザイムの誘導が見られるかどうかを調べたが,明確な発現誘導は起こらなかった. 2.神経発生・分化におけるムチン型糖鎖の機能 ゼブラフィッシュを用いて神経特異的なGalNAc-Tアイソザイムの発現を抑制したところ,後脳領域においては特に顕著な発生異常が見られた.異常胚においては,Wntなどのシグナル分子の発現が,また,神経細胞への分化能を持つマウス胚性腫瘍幹細胞P19細胞において同様に神経特異的なアイソザイムの発現を抑制したところ,神経細胞への分化が抑制された. 3.酵素の構造活性相関 モデル酵素としてGalNAc-T1を用いて,そのレクチン様ドメインの機能を調べた.オリゴ糖を固相化した樹脂,およびGalNAcを共有結合させたタンパク質を用いた実験により,同アイソザイムのレクチン様ドメインは,GalNAcおよびMan残基に対して結合することを見いだした。さらに,Gal/GalNAc-Tモチーフ中のTrp残基が基質との結合に重要であることを見いだした。 4.神経特異的アイソザイムの基質のスクリーニング ファージディスプレイ法を用いて酵素の基質をスクリーニングしたが,特異的なペプチドは単離できなかった.
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