配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2005年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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研究概要 |
ATP受容体チャネル(P2X受容体)構造を原子間力顕微鏡で観察した.昆虫由来Sf9細胞の発現系より精製した受容体タンパク質を,大気中で観察したところ,高さ約4ナノメートルのフラットな島状の固まり認められた.水中観察では,個々の受容体タンパク質の像が得られ,高さが約4ナノメートルであることが判明した.水中にATPを加えたところ,会合する受容体タンパク質の割合の増加が認められ,ATPにより構造が変化することが示唆された.イオン強度を高めた水溶液(150mM KClおよび10mM MgCl_2を含むトリス緩衝液)中で観察したところ,ATP存在下でタンパク質が高密度に配列した2次元結晶に似た像が得られた.このような配列ではプローブのz軸方向の動きを低下させるため,高い解像度が得られる.実際,受容体タンパク質の表面をナノメートル・オーダーで解析することができ,その結果,1)タンパク質は径10ナノメートルのユニット構造を取る,2)ユニット構造の中央には直径数ナノメートルの孔が認められる,3)1つのユニットは数個(おそらくは3つ)のサブユニットから成る,という情報が得ちれた.ATP非存在下ではこのような高密度な配列は得られず,この受容体タンパク質は非ATP結合時には比較的不均一であると推察された.また,ATP受容体の拮抗薬であるスラミンをATPと共存させた場合には,受容体タンパク質の高密度の配列が得られたが,表面を拡大観察するとユニット構造が不明瞭であった.このことから,1)スラミンは単純にATPを受容体から解離させる薬物ではないこと,2)スラミンが結合した受容体タンパク質の状態は,ATPが結合した場合と異なること,が示唆された.以上のことから,リガントとの相互作用のタンパク質レベル(ナノレベル)での解析において,原子力顕微鏡は強力なツールとして利用できることが示された.
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