研究概要 |
テトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE)および1,1,1-トリクロロエタン(1,1,1-TCE)それぞれの水道水質基準値(それぞれ0.01mg/L,0.03mg/Lおよび0.3mg/L)およびその100倍濃度の低濃度汚染水をラットに2または4週間飲用させた後にPCA反応を行い、その増強率を比較した結果、いずれの化合物においても用量依存的,期間依存的なPCA反応増強を認めた。 テトラクロロエチレン(PCE)の水道水質基準値(0.01mg/L)およびその100倍濃度の低濃度汚染水をラットに2または4週間飲用させたところ、用量依存的,期間依存的なPCA反応の増強を認めたことを受けて、そのI型アレルギー増強機構として、PCEが免疫担当器官(脾臓,胸腺,リンパ節)のサイトカイン産生に及ぼす影響について検討を行った。 Wistarラット(雄性,飲用開始時8週齢)にPCEの環境基準値(0.01mg/L)およびその100倍濃度汚染水を4週間飲用させた。飲用終了時に腹部大動脈より採血し、脾臓,胸腺,リンパ節(頚部リンパ節,腸聞膜リンパ節)を摘出した。全血由来のtotal RNAを用いて、RT-PCR法により1L-4,INF-γ mRNAの発現量を測定してTh1/Th2サイトカイン産生に及ぼすPCEの影響を評価した。 PCEを短期間経口的に摂取させた結果、また遺伝子レベルでTh2サイトカインのIL-4 mRNA発現増加が認められ、Th1サイトカインのINF-γ mRNA発現には変化が認められなかった。よって低用量PCEを経口摂取したことにより、腸間膜リンパ節においてTh2分化が亢進したのではないかと考えられた。またTh1/Th2サイトカイン発現に関しては、PCE飲用群においてIL-4 mRNAが有意な発現量増加を示した。 本研究の成果から、PCE曝露によって個体の体質が相対的にTh2側に偏ることがI型アレルギー反応増強機構のひとつではないかと考えられた。本結果は、環境基準値のような低用量PCE曝露により、アレルギー反応が増悪化・重症化に働く可能性を示唆するものである。
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