研究概要 |
本研究課題の実施により下記の新たな知見を得た。研究成果は、国際学会3演題を含め7演題として発表した。 1.薬物動態学的局所利用率の評価 (1)マルチバッチ式Zero-Net Flux法による動態解析能の向上性に関する研究 微小透析法を薬物動態研究に応用する際の問題点であった時間解析能は,複数のプローブを同時に使用したZero-Net Flux法により向上できることをin vivoで明らかにした。 (2)Lipo-MD法の応用に関する研究 ケトプロフェンを含有する市販貼付型医薬品適用時の皮下における非結合型薬物濃度の経時的モニタリングを行い,脂溶性の高い光分解物の皮膚内動態のモニタリングは従来のMD法では回収率が低すぎるため不能であった。Lipo-MD法の応用により回収液中に皮膚内で生成した光分解物を検出することができた。 2.薬力学的局所利用率の評価 応用薬理学的手法を用いてブラジキニンの3相性の血管反応(弛緩→収縮→弛緩)の作用強度の経時的変化を速度論的手法を応用して解析し,これら3つの反応の発現時間および作用時間に関するパラメータの分離評価を試みた。これにより,従来の最大薬効強度の変化を指標とする薬理学的評価では説明不能であった弛緩反応抑制剤投与時の最大収縮反応の増大などが説明できた。 3.抗体を含む潅流液を用いる新規MD法(抗体潅流MD法)の開発 通常のMD法では回収効率が低いと考えられる高分子量・高血漿蛋白結合性の薬物のモデルとしてテイコプラニンを選択し,市販の蛍光偏光免疫法に使用する測定キットに付属する抗体を希釈してMDの潅流液に使用することにより,人為的に組織細胞間液中と潅流液中の活動度勾配を増大させ,回収率の向上への寄与について検討した。抗体潅流MD法により2〜5倍の回収率が得られ,非結合型薬物濃度モニタリングへの応用が示唆された。 4.被覆二重円柱状放出制御製剤(CR製剤)からの薬物放出動態のin vivoモニタリング アンチピリンを含有するCR製剤を皮下に埋め込み,製剤近傍の組織中への薬物放出をMDでモニタリングした。製剤直近と製剤から10mm離れた部位への薬物送達動態は明らかに異なっており,各種MD法により表記の動態評価が可能であることが示唆された。
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