研究概要 |
この研究では、満腹中枢として古くから知られている視床下部腹内側核(Ventromedial hyptothalamus, VMH)の破壊で過食・肥満とレプチン抵抗性(レプチンに反応しなくなる現象)が生じるのは、VMH破壊で、視床下部に存在する摂食を促進するペプチド神経系が、過剰に活性化するか、逆に摂食を抑制するペプチドの作用が、無くなるためであるという仮説のもとに、研究を行った。その結果は、文献Sun et al.,J.Neuroendocrinal,15,51-60,2003,Sun et al.,J.Neuroendocrinal,16,79-83,2004に発表したように、オレキシン神経、メラニン細胞凝縮ホルモン神経のような、摂食を促進させるペプチド神経は、VMH破壊でむしろその活動性を低下させていることが、明らかになった。更に、摂食を抑制するペプチドとして知られているαメラニン細胞刺激ホルモン、副腎皮質ホルモン放出ホルモン(CRH)、コレシストキニン(CCK)は、VMH破壊ラットで、その効果が全く失われていないこと(未発表)が明らかになった。従って、WH破壊ラットにみられる過食・肥満とレプチン抵抗性の原因は、これらの摂食を促進する神経ペプチドを分泌する神経活動の亢進ではなく、摂食を抑制する神経ペプチドが作用できなくなるためでもない。現在はVMHは満腹中枢であるという従来の仮説に代わる、新しい仮説を立てて、研究を進めている。
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