研究概要 |
加齢に伴い内皮細胞機能が低下していること,この機能の低下が加齢に伴う循環器疾患の発症や進展に深く関わっている可能性があることから,次のような研究を行なった. 1.抗動脈硬化作用があるとして注目されている赤ワイン抽出物質(アルコール除去ポリフェノール化合物:RWPC)が,若齢のみならず老齢ラットに対しても冠循環改善効果を示すことをin vitroでの実験により明らかにした.【方法】RWPCの血管平滑筋および冠循環に対する急性効果を検討するために3(若齢)と27カ月齢(老齢)のラットを用い,心灌流標本および摘出胸部大動脈標本を作製し,冠循環(CF)および血管平滑筋収縮弛緩反応を検討した.【結果】RWPCは,CFを濃度依存性に増加させた.CF増加は,老齢ラットでも観察された.また若齢老齢いずれの摘出大動脈平滑筋に対しても濃度依存性弛緩反応を惹起した.そこで,RWPCによるCF増加および弛緩反応の機序を検討した.その結果,若齢ではNO,PGI_2,EDHFの因子が血管拡張作用に関与しているのに対し,老齢ラットの拡張作用にはEDHFのみが関与していることを見出した.2.さらに16年度は,本研究の大きな目標である内皮機能改善の試みについて,特に食餌療法による改善効果を検討するために,RWPCの長期投与による心臓血管系に対する影響に焦点を当てた研究を行なった.【方法】RWPCの慢性投与効果を検討するため,本実験には3カ月齢F344ラットを用い,通常の飼料,高コレステロール飼料,高コレステロール+RWPC飼料で2および3ヶ月間飼育した後に,血管反応性,血小板機能および冠循環について検討した.【結果】RWPCの2および3カ月間の慢性投与実験により循環機能改善効果が得られた.特にRWPC飼料投与群での血小板凝集抑制効果は著明であった.今後,本研究ではまだ明らかにするに至らなかったアルギニンの細胞内取り込みに関与するトランスポーターの加齢変化とNO産生低下の関連についても研究を展開する予定である.
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