研究概要 |
これまで、高等動物におけるオートファジーの分子機構、特にユビキチン様ATG修飾システムを中心に研究を展開してきた。この修飾システムの鍵酵素であるATG7遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作成に成功した(J.Cell.Biol.,2005)。まずオートファジー研究がさかんな肝臓において、肝臓特異的にATG7遺伝子を欠失させると、顕著な肝肥大がおこり、肝炎の発生および生存率の低下が認められた。次に、脳特異的にATG7遺伝子を欠失させたマウスを作成し、顕著な症状が認められていることから、脳・神経系におけるオートファジーの重要性を示す研究に発展することが期待される。平行して、ヒトAtg4Bが、3つのAtg8ホモログ、LC3,GABARAP,GATE-16の前駆体を基質とした特殊なシステインプロテアーゼであるとともに、LC3-リン脂質結合体およびGABARAP-リン脂質結合体からリン脂質を切り離す脱脂質化酵素である事(J.Biol.Chem,2004a)、ヒトLC3/MAP1LC3BがラットLC3同様の真正のモディファイアーである事(J.Biol.Chem.2004b)、さらにGATE-16に相互作用する新規E1様酵素が関与する、まったく新規のUb1システムの発見(EMBO J 2004)、LC3のNMR構造解析(J Biochem NMR 2004)、オートファジーにおけるrab7の機能(J Cell Sci 2004)、GABARAPとGATE-16の修飾型がラット組織内でLC3修飾型と分布を異にすること(Intl J Biochem Cell Biol 2004)も明らかにした。今後、脳特異的Atg7ノックアウトマウスを用いて、神経変性疾患とオートファジーの関連を明らかにしていきたい。
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