研究課題
基盤研究(C)
ミリストイル基の膜画分への局在のためのアンカーとしての役割は早くから考えられていたが、脳に特異的に発現しているNAP22のミリストイル基が細胞内シグナル伝達系の主要な制御因子であるカルモジュリンとの間相互作用の制御にも関わっていることを新たに見出した。この相互作用はプロテインキナーゼCによるリン酸化により制御され、NAP22のカルモジュリン結合ドメインを介してカルモジュリンの関与するシグナル伝達系、プロテインキナーゼCの関与するシグナル伝達系、細胞膜領域でのシグナル伝達系がクロストークしていることを明らかにした。また、HIVnef遺伝子産物やsrcがん遺伝子産物pp60srcなどNAP22以外の複数のミリストイル化タンパク質に関しても、同様の機能制御機構があることを明らかにし、ミリストイル基の多機能性が膜系と細胞質系でのシグナル伝達系のクロストークの制御に重要な役割を果たしていることが解った。バイオインフォマティックスによる推定では生体内の蛋白質の0.5%がミリストイル化されていると予測されたが、ミリストイル化のアミノ酸配列レベルでのコンセンサス配列は存在しない。近年のラフトの発見は生体膜が一様な構造物ではなく局所的に機能場が存在することを示し、細胞が多様な状況に迅速かつ適切に対処するために、生体膜上では機能場(生体膜マイクロドメイン)がドラスティックかつ局所的に生成、消滅を繰り返していることが解った。ミリストイル化蛋白質の膜画分への移行にはミリストイル基だけでなくそのミリストイル化ドメインが機能しており、そのアミノ酸配列の多様性は標的部位である生体膜、あるいは、生体膜マイクロドメインの多様性を反映していると考えられる。
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