研究概要 |
オルガネラプロテオミクスによって新規に同定されたペルオキシソームLonプロテアーゼ(pxLon)の生理的機能の解明を目的として,大腸菌中でN末端にHisタグをつけて組換え発現したタンパク質を用いて諸性質の検討を行った.様々なベクターおよび宿主大腸菌の使用にも関わらず,大部分の組換え発現pxLonは不溶性であった.わずかな可溶性タンパク質をCo-アフィニティカラムおよびゲルろ過で部分精製した.pxLonはゲルろ過で単量体から多体に分布し,単量体以外はいずれも同程度のATPase活性およびATP依存性のペプチダーゼ/プロテアーゼ活性を示した.様々な酵素学的性質は大腸菌酵素に離維持したが,消光性蛍光基質ライブラリーを用いた検討では,pxLoはアラニン残基のC末側ペプチド結合を優先的に切断するエラスターゼ様の基質特異性を示し,大腸菌Lonがキモトリプシン様の基質特異性を示すのとは性質を異にした.ペルオキシソームのマトリックスタンパク質の輸送シグナルに2種類(FTS1およびPTS2)が知られており,N末延長ペプチドであるPTS2は輸送後切断除去されるが,この反応を担う酵素未だ同定されていない.PTS2のコンセンサス配列(Arg/Lys-Leu/Val/Ile-X_5-His/Gln-Leu/Ala)から,pxLonがシグナルペプチダーゼとして機能している可能性も考えられ,現在検討中である.また多量体構造をとるpxLonには熱変性タンパク質の凝集を防ぐシャペロン活性も認められた.この結果は分子状酸素を使って酸化心を行うペルオキシソームにおいて,酸化防止あるいは酸化変性されたタンパク質の分解による品質管理にpxLoが働いている可能性を示唆する. 大腸菌Lonとの一次構造比較から推定された活性中心セリン残基(Ser-733)をアラニンに置換した変異(pxLonS743A)は,ペプチダーゼおよびプロテアーゼ活性は全く示さなかったが,野生型と同程度ATPase活性を示し,両活性が互いに独立した活性であることが示唆された.さらに多量体構造の変異体にも野生型と同様のシャロン活性も認められた. 全長およびC末端SKLが欠失したpxLon cDNAの動物細胞中での発現パターンから,SKLがペルオキシソームへの移行シグナルトとして働いていることを確認した.
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