研究概要 |
肝内胆管消失症候群における胆管再生・修復機構を解析する目的で、原発性胆汁性肝硬変(PBC)を含む肝内胆管消失症候群45例と対照疾患肝43例,正常肝22例の人体材料を用いて免疫組織化学的に、肝内胆管上皮における粘膜再生因子TFF1〜3とTFF2受容体候補分子DMBT1,肝細胞増殖因子(HGF)関連因子(HGFA,HAI-1,cMET)の発現と胆管細胞老化について検討した。肝内胆管系では胆管レベルと胆管障害に応じた特徴的なTFF1〜3,DMBT1発現がみちれ,大型胆管では主にTFF1,3/DMBT1が,小型胆管では主にTFF2/DMBT1が粘膜防御に働くことが示唆された。特にPBCでは胆管障害部を中心にTFF2とDMBT1発現の亢進が見られた。HGF関連分子では、PBCの胆管障害部に特徴的にHAI-1発現亢進が見られた。さらに組織化学的検討と細胞老化関連p21^<WAF1/Cip1>,p16^<INK4a>,p16^<INK4a>抑制因子Bmi1発現の検討から、移植後慢性拒絶肝の肝内胆管とPBCの肝内小型胆管障害部には高率にp21^<WAF1/Cip1>,p16^<INK4a>の発現亢進を伴う胆管細胞の老化がみられることが明らかとなった。RT-PCR法を用いた肝組織中mRNA発現の検討の結果も蛋白発現の検討結果とほぼ一致した。 マウス培養胆管細胞を用いた検討では、TNF-αなどのサイトカイン添加や酸化ストレスによりTFF1〜3とDMBT1,HGF関連因子HAI-1の発現亢進が見られた。また、酸化ストレスは培養マウス胆管細胞に細胞老化を誘導すること、この時、p16^<INK4a>抑制因子Bmi1発現低下と細胞老化関連p21^<WAF1/Cip1>,p16^<INK4a>の発現亢進が見られることが明らかとなった。
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